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第1部 二章【闇メン】その3 第一話 とんでもないプレッシャー

Author: 彼方
last update Last Updated: 2025-10-19 18:30:00

15.

ここまでのあらすじ

 本物のエキスパート雀士のみが登録を許され、裏メンバー派遣業務を行うという『渡邉クリエイター派遣会社』に登録されることになった椎名。

 椎名は勝田台から船橋までの千葉成京線エリアを任された。

 次の行き先は西船橋『ラッキーボーイ』

 そこで新たな強敵が椎名の前に現れる――

【登場人物紹介】

椎名良祐

しいなりょうすけ

主人公。礼儀正しく清潔で爽やかな青年。堅苦しい性格ではなく、場面場面での使い分けが上手いだけ。基本的には気さくな人間である。

渡邉クリエイター派遣会社社員。

渡邉二郎

わたなべじろう

椎名の勤務する『渡邉クリエイター派遣会社』を設立した社長。人を見る目があり一目でその人の人となりを見極める。麻雀はそんなに上手くはない。

福島社

ふくしまやしろ

表の顔は喫茶店の気さくで優しい美人ウェイトレス。しかし、ひとたび卓に着くと人が変わる。知る人ぞ知る凄腕雀士。勝つためにはあまり手段を選ばない。勝利こそ正義という女性には珍しいタイプ。

福島創

ふくしまそう

喫茶店『えにし』の二代目マスター。ヤシロの父。アイスコーヒーを美味しく淹れる名人。麻雀の腕もプロ顔負けの超一流。

尾崎洋平

おざきようへい

勝田台周辺の雀荘で遊んでいる遊び人。毎日遊んでいるが本業は会社経営者。絞りを得意とし、下家を絞り殺すのが趣味という我慢強い打ち手。

その3

第一話 とんでもないプレッシャー

「工藤さん、あんまり圧かけないでよね。初めての人には怖いから!」ともう1人の強面が最初に話しかけてきた強面に言う。

「圧なんざかけてねえだろう。挨拶しただけだ!」その通りであったし、笑顔でもあったが工藤氏はスキンヘッドで体格もいいので、それだけでかなりの圧がある。もう1人の上家の人も強面だし。残る対面の人も猛獣のようなオーラを纏っている。

 するとその時「よろしく」とニコっと挨拶した対面の顔が見えた。

(あれっ?)

 そこには優しそうなお兄さんがいた。

(おかしいな。とんでもないプレッシャーを確かに対面から感じたんだけど……)

 椎名は直感力が優れている方だ。危険人物は対峙した時に分かったりする。ただ、『えにし』のウェイトレスをしているヤシロがあんなに強いとは見抜けなかったが。とにかく、対面のオーラは間違いなく肉食獣の殺意だと思ったのだが。そこにいるのは優男だった。

(気のせいか?)

 しかし、対局が始まると自分の勘の良さを知ることになった。

「リーチ」「ツモ」

「リーチ」「ツモ」

「リーチ」「ツモ」

「リーチ」「ツモ」

「リーチ」

(しっつけえええええ!!!!! さっきからずーーーーーーーっと対面がリーチしてツモるだけのゲームに付き合わされてるんだが。何発パンチを繰り出すんだこの男は!!)

 優しそうなんて、大間違いだった。鬼神のような攻めに全員ただひたすら降りていた。

「ツモ」

 おしまい。誰も一切反撃できないまま対面の圧倒的勝利で終わる。

「優勝、南上(ナンジョウ)さんです! おめでとうございます」

「おめでとうございます!」

「コテツくん強すぎだよ、初めての人いるんだから加減してよ」

「いやあ、手加減って出来ないんですよ。そんな器用ではないので。しかし、ついてたなあ」

 これがのちに『雀神』と呼ばれる南上コテツとの運命の出会いだった。

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